21ある県立病院は、二次医療圏での基幹病院だけでなく、地域医療を担っている病院も多くあります。残念ながら、今回5つの病院が有床診療所から無床化されましたが、地域の特性に応じて頑張っている病院があります。
大事なのは、そこで完結する医療ではなく、地域に必要な医療を提供し、重症な患者は基幹病院に紹介する、そういう機能も併せ持つことでしょう。
岩手日報のSOS地域医療シリーズから
(5)高齢者病院への転換 院長が改革の先頭に
院長のリーダーシップで病院を変える。陸前高田市の県立高田病院(70床)の石木幹人院長(61)は介護予防を含む「高齢者病院」への転換に力を注いでいる。
2004年4月、県立中央病院(盛岡市)から着任。それまで呼吸器外科の専門医として、多くの肺がん手術などを手掛けてきた。
しかし、地域医療に関してはまったくの素人で「最初は何をやっていいのか分からなかった」と悩んだ。
気仙広域の基幹病院の大船渡病院と競合せず、互いの機能を補い合うためには何が必要か。「高齢化が進む地域の中で慢性期の患者のケアが重要だ」と方向を定めた。
院長自ら床ずれのケアをゼロから学び、認知症学会に通って知識を吸収した。高齢者の死因の上位を占める嚥下(えんげ)性肺炎(口の中の雑菌が肺に入り、炎症を起こす)の予防のため、飲み込む力を鍛えるリハビリや口腔(こうくう)ケアにも取り組んだ。
その結果、毎年度3億~5億円の赤字を計上していた同病院は経営が好転。病床利用率の上昇などで、08年度の赤字は約5千万円まで減少した。
さらに、末期がんの患者が自宅で家族と共に過ごすターミナルケアも導入した。
住田町世田米の高城金三郎さん(94)は、長女の村上ツルさん(64)と三女の尾形てい子さん(58)と暮らす。林業に従事してきた高城さん。座敷の壁には、枝打ちコンクールや民有林良質材コンクールなどの賞状が並ぶ。
6月中旬、往診に訪れた石木院長に、高城さんは「偉い先生に、遠くまで来てもらうのは申し訳ない」と入院を訴えた。
「私は週に1度来るだけだから苦じゃない。安心して過ごしてください」と石木院長。長年、山に生きてきた誇りを尊重するように、患者の人生に寄り添った、優しい言葉だ。
「余命宣告した人が家族と一緒に暮らすうちに、見違えるほど回復したことが何度もあった。患者の顔色が良くなるのがどれほどうれしいことか」。数々の肺がん手術で多くの命を救ってきたスペシャリストが、今度は地域医療に魂を込める。
「陸前高田や住田には医者がいません。だから、年を取っても病気になってはいけません」
陸前高田市小友町の只出(ただいで)公民館で行われた健康教室。約80人の地域住民を相手に、石木院長はユーモラスに呼びかけ、寝たきりを防ぐ「玄米ニギニギ体操」を指導した。
同市小友町の村上力男さん(63)は「2月に95歳で亡くなった母も、最後まで石木先生にお世話になった。このまちにはなくてはならない人」と慕う。
県立高田病院の経営状況とは 03年度に約5億1700万円の赤字を計上し、産科病棟を休止。石木幹人院長が04年度に着任後、院内に床ずれや排せつ、口腔ケア、リハビリなどを充実させるトータルケア委員会を設置し、高齢者医療を強化した。現在、入院患者の平均年齢は80歳を超え、病床利用率は70%以上。平均入院日数は約20日間。08年度の赤字は約5千万円に減少した。
【写真=地域住民や研修に訪れた岩手医大生(左)らと「玄米ニギニギ体操」を楽しむ石木幹人院長(中央)=陸前高田市小友町】
(2009.6.27)
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