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2009年7月 6日 (月)

医師の専門性と総合医は 岩手

 総合医を誰が育てるのか。結局、個々の病院、というか医師に負わせているのは、いかがなものでしょうか。前に紹介したように、中央病院の後期研修(5年)では、総合医コースがありますが、こうしたことは利用されていないのでしょうか。なんだか、時間がない切迫感が伝わってきます。

 岩手日報のSOS地域医療シリーズから

(6)若き医師の献身 「道をつくる」志高く

 緊急手術が相次ぎ、丸2日ほとんど寝ていない。妻と3人の子どもが待つ家には3日間帰っていない。

 「ほかの医者が10年かけて覚えることを、2年でマスターしたい。医療過疎の地域ではみんな、医者を待っている」

 盛岡市の岩手医大外科学講座で学ぶ藤井大和医師(32)=花巻市出身、自治医大卒。今年3月まで西和賀町の国保沢内病院に3年間勤務した。

 医師不足の影響で同僚医師が次々と去り、2006年7月から約9カ月間、常勤医は自分1人だけになった。

 外来や入院患者の診療のほか、胃カメラ検査や訪問診療、福祉施設の回診など、すべてこなした。朝6時から深夜2時までぶっ通しの勤務。それでも「毎日が充実していた」と振り返る。

 訪問診療では家族のように迎えられ、時には一緒に花見をしたり、朝まで杯を交わしたり。住民一人一人の生活背景を知ることができた。

 在宅で痛みを抑える緩和ケアを施した家では、家族そろって、祖父をみとり、孫が「おじいちゃん、頑張ったね」と別れを告げた。家族は「先生に診てもらえて、本当に良かった」と涙をこぼした。

 常勤医1人という絶望的な状態に追い込まれた時、全職員で病院の存在意義を話し合った。病院廃止論も出た激論の末、「地域のとりでを守るには、医師だけに頼ってはだめだ」と心を一つにし、再スタートを切った。

 看護師や事務職、介護補助員ら全職員ができる限りの医療を学び、藤井医師をサポート。全職員が1次救命措置(BSL)や2次救命処置(ACLS)などの資格を取得した。

 全力で走り続けた3年間。しかし、限界も感じた。「たとえ、年に1度のことでも、生死をさまよう患者に適切な処置ができなかったら、地域の信頼は得られない」

 今春、後任医師のめどが立ったこともあり、さらに高度な技術と知識を身に付けようと、大学病院での修業を選んだ。研修医などを教える指導医の資格取得も目指す。

 地域医療は、沢内病院11代院長の増田進さんのように、「赤ひげ医師」の献身に負うところが大きい。だが、総合医の育成システムが確立されていない今、1人の医師が退職すると、地域医療は途端に危機に瀕(ひん)する。

 「地域医療に携わる医師自らが、若い医師を育てなければ、持続的な医療は確保できない。医療を待つ地域の人たちのために、私がその道をつくる」。藤井医師の情熱に、希望の光を見た。

 医師の地域偏在とは 本県の2007年の人口10万人当たりの病院勤務医師数は134・7人で全国32番目。トップの高知(212・1人)より77・4人少ない。開業医らも含めた06年の人口10万人当たりの医師数は、盛岡医療圏が276・6人に対し、久慈は118・2人、宮古121・4人、二戸125・0人など。県北沿岸地域の医師不足は深刻だ。

【写真=不眠不休の中でも、笑顔で勤務に励む藤井大和医師(左)。地域で医療を待つ人たちのために、日々研さんを重ねる=盛岡市・岩手医大付属病院】

(終わり)

(2009.6.28)

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